林業について
現在の林業とは?
ちなみに「林業」という言葉で百科事典にはこのように書いてあります。
林業は森林を育成、維持し、これを経済的に利用する産業である。
狭義には育林から立ち木販売までをさすが、広義には製材業や木材を原材料とする諸工業を含めていうこともある。
日本ではその形態から、森林の自然回復力を利用し、天然林→伐出→更新→天然林の循環をとる林業と、人工造林→伐出→人工造林の循環をとる育成林業の2つに分けられる。江戸時代初期には一部に人工造林事業が行われており、日本は造林事業の先進国の一つとされている。
人工造林は、地拵え(じごしらえ)、植え付け、下刈り、枝打ち、間伐の諸作業と最終的な伐採がある。普通、杉で30~50年、ヒノキで40~60年の期間を要する。
(ブリタニカ国際大百科事典より抜粋)
いかがですか?
苗木を植樹して伐採(収穫)するまでに必要な時間は約50年前後の時間が掛かります。こんな産業は他には無い!と言っても過言ではありません。
1960年~1990年代は木材価格が高騰していたので林業で利益を得ることが可能でした。しかし、現在では50年生の杉山1ha(約3000坪)を伐採(収穫)しても手取り額は約200万円以下です。しかもその50年間の育成経費は約100万円掛かっています。さらに伐採後は「再造林(植樹)」をしなければ継続性のある事業にはなりませんので、新たな植樹費用等が約100万円かかります。
(再造林しなくて、伐採後放置すればかろうじて約100万円は残ります。)
これでは、誰も林業経営をする人が居なくなってしまいます。現に実際のところ林業経営の後継者はほとんどいません。
山林所有者が森林組合等に委託・管理してもらっているのはまだ良い方で、放置されている山林が大半であるというのが実情です。
林業の大まかな成り立ち
①造林(植樹)
新規に雑木や原野に杉や桧等の苗木を植え付ける拡大造林と杉等の人工林を皆伐した後に植林する再造林がある。1~3月に1haに約2,000本(2m間隔)植え付ける。
一人作業で約20日間必要。
*植林した木を伐採するまでに約50年必要となる。(私が植えたこの木は孫?が切ることになる。)
②下草刈り
植樹後6~7年間は幼木が雑草に覆われないようにするため、毎年7~9月にかけて木の周りの雑草を刈りこむ。非常にきつい仕事。一人1日約0.1haが作業の目安。
*マムシや蜂に注意が必要。
③間伐(伐採)
林齢30年から50年にかけて数回30%の間引きを行う。この木は樹齢40年。胸高直径40cmの立木1本で約1万円の売り上げになる。
但し、伐採して搬出する他に各種経費が約8千円程かかるので手取りは約2千円。
*作業は非常に危険が伴うので慎重に行う。
④間伐(造材)
伐採した原木の枝葉を切り落とし、木材の形状や径級に応じ長さを3m・4m・6mに切り揃える。 原木市場の要望を確認しながら臨機応変に対応する。
⑤間伐(搬出)
玉切りした丸太をウィンチで引き寄せ、運搬車の荷台に乗せ、木材運搬用10トントラックが集荷できる土場に集める。運搬車1台に1㎥=1トン乗せることができる。
*間伐作業の後に飲む焼酎は最高にうまい!
④林間わさびの播種・定植
間伐した林地に残された枝葉を整理し地揃えをする。その圃場にわさびの播種・定植を行う。
2~3年後に収穫することで林地の有効活用が図れる。
監督 矢口史靖 キャスト 染谷将太 長澤まさみ 伊藤英明ほか
簡単ではありますが・・・(失礼 m(__)m)
林業という職業についてわかりやすく知ることができます。
ぜひ一度ご覧ください。
私の林業に対する思い
私の場合、先祖より受け継いだ山林約50haを基本的に家族労働のみで管理しています。父の時代には林業経営だけで十分生活ができたそうです。
しかし今は違います!
では何故今でも林業経営を続けるのでしょうか?
我が家は代々山間地において農林業で生計を立ててきました。私が7代目に当たります。
林業経営は時間がかかるため、私の植樹した木は未だ見ぬ孫が伐採する予定になります。私が伐採している木は祖父が植樹したものです。気の遠くなる事業継承です。知らず知らずのうちに我が家の教訓として引き継がれているのかもしれません。
私の林業スタイルとは、自己完結型循環林業とでもいうべき自分で自分の所有する山林を管理し、植林・育成・伐採のサイクルを繰り返すものです。ただし、農業と違って林業のサイクルは約50年以上もの時間が必要です。ですから後継者が居なければ存続しない産業でもあります。
木材価格が高値で安定していた1980年以前は林業や木材関連産業は景気が良く従業者も多く活気づいていました。
(当時を思い出すと、臨時に高額な支出がある場合に、父は「山の木を切ってくるか。」と言って伐採していました。)
ところが近年(1970年代以降)は高度経済成長とともに外材・輸入材が急増し、国産木材の需要が減少したことによって原木価格が低迷しています。
林業は投資から回収までの時間が長いため、伐採して収入があっても原木価格が低いために外注すれば再造林の経費さえ出ないのが現状です。
私の場合、林業作業の約70%を自力で行うこと及び林間わさび等の農業と組み合わせる複合経営により何とか林業経営や農業経営を維持することができています。
最後に、
私は思っています。
林業とは、ただ単に「木」を植え育てているのではない!と、私が育てているのは「森」であり「山」である!と。
もちろん、趣味や道楽ではなく伐るために植え育てている。経済的にも成立することが必須条件であることは言うまでもない。林業は天地自然の恵みを利用し、再生可能な資源循環型の理想的な産業であると確信して、やせ我慢しながら、世間から冷笑されながらも日々山仕事に励んでいる。
それが「私にとっての林業」です。